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溶媒の精製(エーテル・ケトン・エステル)

有機化学の研究で使う溶媒の精製法を紹介するこのシリーズ。前回は炭化水素、アルコール系溶媒の精製法を紹介しました。

2回目の今回は、エーテル類、ケトン・エステル系溶媒の精製方法を紹介します。

エーテル類

エーテル類の蒸留

エーテル類ではジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサンがよく使われるエーテル系の溶媒です。

溶媒に使われるエーテル

溶媒沸点(℃)融点(℃)密度(g/mL)分子量
ジエチルエーテル35-1160.7174
テトラヒドロフラン66-1080.8972
1,4-ジオキサン101121.088

エーテル類の蒸留は次の手順が一般的に行われます。

  1. 不活性ガス中、金属ナトリウムをプレスしたナトリウム線とベンゾフェノンを溶媒に加えて、エーテル類を加熱還流する
  2. 溶液の色が濃い青になったら(1-2時間の加熱還流)、分留する

エーテル類の蒸留は手順は簡単ですが、注意点があります。

エーテル類は過酸化物による爆発の危険があります。そのため、エーテル類は蒸留塔で必要時に蒸留するのがベターでしょう。(ベストは脱水溶媒の購入ですが・・・)

蒸留塔とは?

4つの蒸留塔

(写真は熊本大学大学院自然科学研究科理学専攻化学講座物性科学研究室から引用)

蒸留専用のセットで、底部のナスフラスコに溶媒、ベンゾフェノン、ナトリウムが入ってます。このセットを作っておくことで、必要なときにスイッチを入れるだけで、簡単に蒸留ができます。

使い方は、写真の赤丸のコックを操作して、初留を写真の左側に出し、本留を真ん中の丸い部分に溜めます。ある程度溜まったところで、セプタム部分からシリンジでとって使います。

このセットをあらかじめ作っておくことで、いつでも、簡単に蒸留した溶媒をとれるというメリットがあります。一方、スペースを使ったり、溶媒を補充するときにナトリウム線を新たに作ったりと手間がかかるデメリットも。

大学の研究室では教育的観点から蒸留塔を使うというところも多いですが、エーテル類は危険性もあるため、徐々に脱水溶媒を購入する流れになってます。

ケトン・エステル

比較的極性の高く、安価、反応後に除去しやすい溶媒ということで、アセトン、酢酸エチルもよく使われる溶媒です。

溶媒に使われるケトン・エステル

溶媒沸点(℃)融点(℃)密度(g/mL)分子量
アセトン57-940.7958
酢酸エチル77-840.9088

これらの溶媒は蒸留の手順も簡単です。

  1. ナスフラスコに溶媒と硫酸マグネシウムを入れて、1日以上放置する
  2. 濾過で硫酸マグネシウムを取り除く
  3. 予備乾燥した溶媒を、乾燥した器具に移して、常圧蒸留

私がいた研究室では、空いたガロン瓶に溶媒と硫酸マグネシウムを入れておいて、ドラフトの下に放置していました。こうしておけば、すぐに蒸留して使うことができます。

アルコール類

アルコール類の精製

アルコール類の精製では水を除去することが大切です。方法としては、金属マグネシウムでマグネシウムアルコキシドを生成し、その後に蒸留します。

  1. 不活性ガス中、金属マグネシウム5 gを入れたナスフラスコに脱水アルコール(市販or他研究室からもらう)50 mLを加え撹拌し、マグネシウムアルコキシドを生成させる
  2. 反応が終わったマグネシウムアルコキシド液に、アルコール(2 L)を入れ、1-2時間ほど、加熱還流する
  3. Vigreux管をつけて常圧蒸留

当たり前ですが、手順1と2で使うアルコールは同じアルコールを使ってください。手順1でエタノールを使ったのに、手順2でメタノールを使ったら精製になりません。

マグネシウムアルコキシドの生成法

メタノール、エタノール、イソプロパノールがアルコールとして、よく使われる溶媒です。この方法は3種類のどれにも使える精製法ですが、手順1に関して、アルコールごとに違いがあります。

メタノール:金属マグネシウムに滴下すると、室温でも5分以内に反応が進行します。反応熱で、アルコキシド生成が加速して、発熱が止まらなくなるので、事前にナスフラスコを冷却できるように、大きめの容器に氷水を準備しておきましょう。

エタノール:室温ではアルコキシド生成はほとんど進行しません。エタノールを10 mL程度入れたところで、ドライヤーで加熱し、アルコキシドを生成させます。アルコキシドが生成すれば、水素が発生するので、発泡で確認しましょう。また、ドライヤーの加熱を止めても、反応熱でフラスコが温かくなっていることでも確認できます。

イソプロパノール:かなり反応しにくいので、イソプロパノールを20 mL程度入れたら、オイルバスで加熱します。40℃くらいから始めて、様子を見ながら、徐々に温度を上げていきます。個人的な経験では、約55℃でアルコキシドが生成しました。(金属マグネシウムの状態やオイルバスの精度で温度は結構変わるので、あくまで目安としてください)

ケトン類

・アセトン

エステル類

・酢酸エチル

ハロゲン含有

・ジクロロメタン
・クロロホルム
・四塩化炭素
・1,2-ジクロロエタン

非プロトン性極性溶媒

・アセトニトリル
・N,N-ジメチルホルムアミド
・ジメチルホルムアミド
・トリエチルアミン
・ピリジン
・N-メチルピロリドン
・ニトロメタン

沸点・水への溶解性◯△☓
消火と聞いて最初に思い浮かべるのは「水をかける」ことだと思います。

普段の生活であれば、もちろんそれで大丈夫です。

しかし、研究室での火災では違います。「水をかけるのは間違い」くらいの認識でいたほうがいいでしょう。

 

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