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みそ汁を作ったことはありますか?

ほとんどの人はみそ汁を飲んだことがあると思いますが、インスタントでないみそ汁を作ったことがある人はあまりいないのではないでしょうか。

作ったことがある人ならピンとくる話なのですが、みそ汁は作ってから時間が経つと味がどんどん落ちていきます。

今回は、その理由を科学的に解き明かしていきましょう。

みそ汁を作り置きしないのはなぜ?

大盛りのご飯とみそ汁

味噌を使った料理はたくさんあり、日本食で定番の汁物のみそ汁や味噌煮込みうどんがあります。

どちらも味噌を使ったおいしい料理です。

両者を比べたときに、味噌煮込みうどんは煮込んで食べることはありますが、みそ汁は煮込むことはありません。同じ味噌を使った料理なのに、この差はどうしてでしょうか?

ここでは、みそ汁を煮込まない理由について見ていきましょう。

理由①:加熱で酵素が壊れる

味噌は大豆を発酵させてつくります。「発酵」ですので、味噌は微生物を含みますし、微生物が持つ酵素もあります。

味噌の旨味成分はアミノ酸の「グルタミン酸です。グルタミン酸が増えると、旨味が増します。微生物が持つ酵素には、グルタミナーゼ(グルタミングルタミン酸の変換酵素)やプロテアーゼ(タンパク質アミノ酸の分解酵素。グルタミン酸も生成する)があり、旨味成分を増やすので、酵素があることで旨味が増します。

しかし、味噌(を含む料理)を加熱し続けると酵素が失活していくので、グルタミン酸を増やすことができなくなってしまいます。

Alat2酵素の構造

(画像はイメージです。このタンパク質はグルタミナーゼ、プロテアーゼではありません。)

理由②:香りが飛ぶ

2つ目の理由は香りが飛ぶためです。

これは有機化学の研究をしている人ならよくわかると思います。香りがするということは何らかの化学成分が揮発しているということです。Swern酸化で非常に臭いジメチルスルフィドが副生する問題を解決するため、ジメチルスルホキシドの代わりにデシルメチルスルホキシドが開発されました。スルフィドの分子量を大きくすることで、揮発性を下げ、不快な臭いを軽減しています。

New odorless method for the Corey-Kim and Swern oxidations utilizing dodecyl methyl sulfide(Dod-S-Me) Tetrahedron 2003, 59, 8393.

味噌の香りの成分は脂肪族エステルやカルボニル化合物、アルコールです。(ウィスキーと同じです)加熱していると、こういった臭いのもとになる化学成分が揮発し続けるので、やがて臭いは弱くなります。

「嫌いなものは鼻をつまんで食べる」と言いますが、臭いは食材を美味しく感じる重要な感覚です。その臭いが弱くなるため、みそ汁は煮込まないのです。

味噌煮込みうどんとの違い

上の理由①グルタミン酸を増やす、②香りを残すため、みそ汁は一度沸騰させたら、その後は煮込みません。それでは、味噌煮込みうどんではどうして煮込むのでしょうか?

もっとも大きな違いは2つの料理の素材にあります。

みそ汁は豆腐、わかめ、しじみ、油揚げなど、あまり素材の種類は多くありません。一方、味噌煮込みうどんはうどんの他に野菜、肉、魚など多くの食材を合わせます。

つまり、みそ汁において味噌は食材の主役であるのに対し、味噌煮込みうどんにおいては味噌は脇役です。主役は他の食材ですが、特に肉や魚は独特の臭みを持ちます。適切な処理をしないと臭みがあって、おいしく食べれません。

味噌はそれらの臭みをとる役割があります。

具体的には、味噌の中でコロイド状になっている大豆の残りカスが臭み成分を吸着します。一方、みそ汁では味噌が主役のため、臭みを出す素材を使わず(あるいは下処理したものを加え)、作り上げます。

コロイドは加熱して分散させた後に冷却・静置を繰り返すと、凝集し、舌触りが悪くなり、おいしくなくなってしまいます。味噌煮込みうどんでは肉や魚のように味が強いものがあるため、多少、舌触りが悪くなってもおいしいですが、味噌が主役の味噌汁では舌触りの悪さは致命的です。

味噌汁では味噌が主役

  1. 酵素を失活させずに旨味を増やす
  2. 香りを残す
  3. 舌触りを良い状態に保つ

これらの理由から味噌汁は煮込みません。主役の食材を中心に調理するということです。

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