有機化学の研究室に入った学生が悩まされる最大の問題がコアタイムが長いということでしょう。有機化学では、朝9,10時から始まって夜10,11時までやっている研究室が多いです。
会社だったらブラック企業認定間違いなしの労働時間ですが、どうすれば解消できるのでしょうか?
今回は解決策を考えてみたいと思います。
最初に断っておきますが、書いてあるのは理想論なので、現実的に可能かどうかは目を瞑ってください。悲しいかな、現実はなかなか変わらないです。
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どうして有機化学の研究室はコアタイムが長い?
はじめに、コアタイムが長い理由から考えてみましょう。
大きな理由は次の4つだと、私は考えています。
①終わりがない
研究自体に終わりがないのはしょうがないです。研究とはそういうものです。
それでも会社であれば、「この機能を持つ化合物○kgを○月○日までに納品する」という明確な目標があります。会社の基礎研究であっても客観的な基準のゴールがあります。
しかし、大学の研究ではそういったゴールがありません。論文が出ても、その発展の研究があって、どこまでも行けてしまいます。
研究をやればやるだけ広がっていき、果てが見えなくなります。
②マンパワーが必要
有機化学の研究は、他の分野の研究と比べて、自動化されている手順がまだ少ないのが現状です。自動化されている精製や分析装置もあり、会社では人数分のHPLCや自動分取カラム装置が用意されていて、スペース、予算ともに潤沢にあります。が、大学にはどちらもありません。
どうしてもマンパワーで実験を進めていくしかないのです。
③明確な単位認定基準がない
大学の単位の認定に客観的な基準がないことも理由の一つだと思います。
基準はある、と言い張る人もいるかもしれません。確かに建前上はありますが、現実的には修士号までなら学費を払って、時間が経てば誰でも取得できます。
そのため、自分のモチベーション次第で頑張るかどうかが決まり、だらだらと実験することになっています。
教員側もよほどの理由がない限り、単位を与えないことができないです。修論を提出していない、発表をしていないなどの理由があれば単位不認定になりますが、まずないでしょう。
そもそも研究室側も、そんな学生にもう1年残られても迷惑です。
どうすればコアタイムを短くできる?
私個人の考えでは、修士号を簡単に取得できないようにすることで、大学の研究室のコアタイムは短くできるのではないかと思います。もちろん、実験量は今と同じままです。
一定基準の成果を出せば修士号を取得できるようにすれば、上記の理由の①、③に対する解決になります。
最近は成果主義が広まりつつありますが、それと同じように、働く時間ではなく成果で評価するようにすれば、早く終わらせたい人は早く実験を終わらせて帰り、そうでない人は自分のペースでやっていく。
このようにすることで、コアタイムも短くなりますし、社会に出る修士号取得者の能力も高くなります。
機械による自動化に関しても、理想は会社などから支援してもらえるような研究も同時並行で進めていくことです。こうすれば予算の問題は解決できます。ただ、スペースだけはどうにもならないですが・・・
とにかく、時間さえ経てば修士号を取れるということが一番の問題でしょう。
そりゃ、実験をやってもやらなくても同じ肩書になるなら、みんなやらない方を選びますよ。
まとめ
今回、記事にした内容は、あくまでも理想論なので現実的には無理ですね。成果主義とは言っても、修士の研究テーマだと当たり外れが大きく、それらを含めて客観的に判断基準を作るのはそうとう難しいです。
それに学生を卒業させないと文科省からの予算が減る可能性もありますし。そのため、時間という客観視できる基準が評価しやすく、必然的にコアタイムが長くなるんですね。
結局、何が言いたいかというと、必ずしも教員側も好き好んでコアタイムを長くしているわけではないないということです。