【実験手技】TLCはガラスプレートとアルミシートのどちらがいい?
Abstract
  • TLCの土台の違いによるメリット・デメリットを解説

有機化学の研究で、必要な実験器具は多々ありますが、TLCはその最たる例ではないでしょうか。反応が進行・完結しているか確認したり、不純物が混ざっていないか確認したりと研究の多くの場面で、お世話になっていると思います。

そんなTLCですが、シリカゲルが貼ってある土台にはガラスとアルミシートの2種類がある事はご存知でしょうか?(他にもプラスチックがあるそうなのですが、私は見たこともないし、取り扱ってる業者も周りにはいませんでした・・・)

土台がガラスとアルミシートでは使い勝手がかなり違いますが、研究室ではどちらかしか置いてないことがほとんどだと思います。

この記事では、私が両方を使用して感じた、それぞれのメリット・デメリットを紹介します。

Contents

TLCとは?

有機化学の実験をしていれば知らない人はいないと思いますが、はじめにTLCについて簡単に触れておきます。

TLC:Thin Layer Chromatography
薄層クロマトグラフィー

薄い土台上のシリカゲルなどを貼ったもの。シリカゲル上を化合物が進むときにシリカゲルとの相互作用の強弱により、展開速度の差が出ることを利用し化合物を分離します。

広く使われているTLCは順相のものです。

順相・逆相とは?

順相:固定相が高極性、移動相が低極性→低極性化合物の分離に適している
逆送:固定相が低極性、移動相が高極星→高極性化合物の分離に適している
固定相:シリカゲル 移動相:展開溶媒

糖、アミノ酸のような生体分子を研究していると逆相を使うこともありますが、そうでなければ順相を使っていると思います。

土台の違いによるメリット・デメリット

話が逸れていました、ここから土台の違いによるメリット・デメリットを紹介していきます。メリットは赤線デメリットは青線で示してあります。

ガラスプレート

メリット

・土台がしっかりしているので扱いやすい

TLCは、展開槽に出し入れしたり、呈色したりと動かすことが多いので、土台がしっかりしていると取り扱いがしやすいです。

デメリット

・怪我をする可能性がある

ガラスであるため破片や角で手を怪我しやすいです。

・専用のカッター(ダイヤモンドカッター)が必要

硬いガラスを適切な大きさに割るために、割れ目を入れるカッターが必要です。ダイヤモンドが先端についたTLCプレートカッター(別名ダイヤモンドカッター)を使いますが、きれいに割るには相当な慣れが必要です。まっすぐに割れ目を入れられるものもありますがいいお値段がします。

・大きさの調節がしにくい

先述の通り、TLCとして使うためにダイヤモンドカッターでガラスに割れ目をつけて、適切な大きさに割ります。実験をしながら、その都度割るという使い方がしにくいので、事前にTLCを様々な大きさに割っておくか、同じ大きさのものを使うようにするしかありません。

アルミシート

メリット

・ハサミで切れるので、大きさを調節しやすい、
・ガラスより少し安い

値段は業者によってまちまちですが、アルミシートのほうが少し安いです。私が買っていたときは500円/箱ほど安かったです。わずかな差ではありますが、TLCの消費量はハンパないのでチリツモですね。

デメリット

・土台が少し柔らかいので扱いにコツがいる

アルミシートの固さは厚紙に近いと思います。ある程度しっかりしていますが、指で曲がる程度の柔らかさはあります。これを展開層に入れたり、呈色したりというのは慣れるまでは少し面倒かな・・・という気がします。

慣れてしまえば、どうということもないですがね。

あと、アルミシートのデメリットかわかりませんが、人によってはガラスプレートのものよりスポットが別れにくいと言う人もいます。私個人はそういった体感は無いですが…。スポットが非常に近い化合物を使っているとそういった感想を持つかもしれません。

結局、どっちがいい?

ガラスプレートとアルミシート、どちらも一長一短ありますが、個人的にはアルミシートの方が使いやすいと思っています。

アルミシートを推す理由はガラスプレートよりメリットが多く、デメリットは慣れでカバーできるからです。

詳細は上で書いてある通りなので改めては書きませんが、アルミシートは研究室に配属されたばかりの4年生でも無駄にすることなく使用することができます。

私の使い方

最後に私の研究室でのアルミシートTLCの使い方を紹介します。

時間があるときにアルミシート(20 x 20cm)を4cm幅で5本に切り分けておきます。使うときに用途に合わせて幅を調節して切るようにしています。

例えば、反応の進行を見たいときは原料または生成物と3点打ちするので、幅1.5cmに切ります。一方、カラムクロマトグラフィーのときは1枚のTLCで多くのフラクションを見たいので、3cmに切って5~7個のフラクションを同時に見ます。(幅は目分量です)

幅やスポットする数は例なので、この通りである必要はありませんが、その場その場で適切な幅に切ることができるのが、アルミシートの最大のメリットであると思います。

まとめ

今回の記事ではTLCプレートで、ガラスプレートとアルミシートを紹介しました。

研究室ごとにどちらを使っているかは違いますが、それぞれにメリット・デメリットがあるので、もしもう一方使ってみたいと思ったら研究室のスタッフに相談してみてください。

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