- DMSO、DMFのような高極性溶媒を簡単に除く方法を紹介
- 分液に使う有機溶媒がポイント
DMSOやDMFのような極性溶媒は多くの有機化合物や無機化合物を溶かすので、反応に使うことも多い溶媒です。
これらの溶媒を使ったことがある人は誰しも感じたことがあると思いますが、反応後の除去がとても面倒です。エバポではとばせないくらい高沸点(DMF:153℃,DMSO:189℃)なので、真空ポンプで直引きのような荒技に出たこともあるかもしれません。それでも、完全には除去できず、少し残りますよね。
そこで今回は、水溶性の高沸点溶媒を簡単に除去する方法を紹介します。
Contents
水溶性の高沸点溶媒は?
実際に研究で使うことがある、水溶性の高沸点溶媒にはどんなものがあるでしょうか?ここでは代表的な例を紹介します。
これらの溶媒は有機化合物と無機化合物の両方の溶解性が高いため、有機化学の研究ではよく使われますが、除去が面倒という一面もあります。
(高極性溶媒には、他にもTHFや1,4-ジオキサンなどがありますが、それらはエバポで除去できるのでここではとりあげません)
水溶性の有機溶媒の除去は分液!
水溶性溶媒は分液で除去する
では、本題のDMSO,DMFのような溶媒の除去の方法を紹介します。
その方法は、分液です。
ここまで引っ張っておいて分液かよ、と思うかもしれませんが、水溶性の高極性溶媒と疎水性の有機化合物を分けるときは分液が一番です。分液であれば、溶媒量が多くてもスケールを上げて対応しやすいです。
ただ、一番大事なのは分液で使う有機溶媒です。ここを間違えると、時間がかかってしまったり、完全に除けずに、結局真空ポンプを使うはめになります。
肝心の分液で使う溶媒ですが、それはトルエン100%もしくはヘキサン/酢酸エチル=5/1~4/1です。
トルエン100%もしくはヘキサン/酢酸エチル=5/1~4/1であれば、DMF, DMSOなどは有機層に来ないで、水層に留まります。そのうえで、必要な有機化合物は有機層に溶けるので、高極性溶媒を除去できます。
酢酸エチル100%で分液すると、DMF, DMSOの一部も酢酸エチルに混じってしまうので、必ずヘキサンを一定割合、加えましょう。
分液で除去する手順
ここではDMFを溶媒として使っている反応を無機塩の水溶液で反応停止したものを想定します。目的の有機化合物(トルエンに可溶)がDMF+水の混合溶媒に溶けているものとします。
- 反応停止後の溶液をトルエンで洗い込みしながら分液ロートに移します
- 分液ロートを振って、有機層と水層を分離します
- 水層を分液ロートに戻して、トルエンを加えて、分液します
- 手順②、③をさらに2回繰り返し、有機層をまとめておきます
- まとめた有機層を分液ロートに移し、水(※必要なら複数回)、brineで有機層を洗って、最後に硫酸ナトリウムor硫酸マグネシウムで乾燥します
※分液のスケール・腕前によります。経験上、100mL分液ロート以下であれば、1回で大丈夫です。それ以上だと2,3回必要なこともあります。
一般的な分液の手順なので、書くほどの内容ではないかもしれませんが、念のために書いておきました。
トルエンとヘキサン/酢酸エチル混合溶媒の使い分け
トルエン100%とヘキサン/酢酸エチル=5/1~4/1の使い分けはあるのか、ということをよく学生に聞かれたので、それについて答えておきます。
使い分けの必要はまったくありません。好みの問題です。
もちろん取ってきたい有機化合物が溶けることが大前提ですが、それさえクリアすれば、トルエンとヘキサン/酢酸エチルの混合溶媒のどちらを使っても構いません。
選ぶ基準は「分液後のエバポのしやすさ」と「混合溶媒の準備の手間」のどちらをとるかだけです。
僕が大学の研究室にいたときは、ヘキサン/酢酸エチル=4/1の混合溶媒を愛用していました。
理由は①エバポでとばしやすく、②ヘキサン/酢酸エチル4/1の溶媒を500mL瓶に常備しておけば手間がかからないからです。
エバポで除去しやすいのが最大のメリットであることは、実験をしていればわかると思います。混合溶媒を作るのも、その都度作るのは面倒ですが、まとめて作っておけば大した手間ではありません。研究室で、みんなが使うようになれば、ガロン瓶にまとめて作っておいてもいいかもしれません。
まとめ
DMF, DMSOのような水溶性の高極性溶媒を分液で除去する方法を紹介しました。
トルエン100%もしくはヘキサン/酢酸エチル=5/1~4/1で分液をすると簡単に除去できます。この溶媒を使うことがポイントで、酢酸エチルのみだとDMF, DMSOも酢酸エチル層に入ってきてしまいます。
簡単にできる方法なので試してみてください。