酢豚に入っているパイナップルが許せないという話はよく聞きます。甘酸っぱい味が嫌いな人が多いみたいですね。
そんな声が多い中、パイナップルが酢豚からなくなることがないのはなぜでしょうか?
その科学的な理由を今回は解き明かしていきましょう。
Contents
肉を柔らかくする食材
お肉の美味しさの一つの尺度に、柔らかさがあります。
硬くて噛みちぎれない肉よりも口の中で溶けるような肉のほうが、誰でも好きですよね。肉の柔らかさは、肉の部位や種類に依るところもありますが、調理の工夫で柔らかくすることもできます。
ここからは肉を柔らかくする調理法について、化学を交えて解説します。
肉の硬さとは?
そもそも肉の硬さは何によって決まっているかというと、
- 筋タンパク質
- コラーゲン
によってです。
よく美容関係でコラーゲンという単語は聞きますが、コラーゲンはタンパク質の1種です(なのでコラーゲンのまま吸収されることはないです)。前者は名前に入っている通りで、どちらもタンパク質です。
つまり、肉の硬さはタンパク質によって決まっているということです。
どうやって肉を柔らかくする?
肉の硬さがタンパク質で決まっているのですから、肉を柔らかくするにはタンパク質を分解すればいいわけです。
ではどうやってタンパク質を分解するのでしょうか?
さすがに酸性や塩基性条件下でグツグツと加熱するなんてことは料理ではできません。ですので、他の食材を使って、肉のタンパク質を分解することになります。
ご存知の通り、タンパク質は何十、何百というアミノ酸がペプチド結合(アミド結合)によって連なっている化合物です。タンパク質を分解するには、このペプチド結合を切断します。
ペプチド結合(アミド結合)は比較的強固な結合なので、室温程度で切断するには酵素の力を借りることになります。
ペプチド系の研究をしている方なら、トリプシン、キモトリプシンといったタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の名前を聞いたことがあるはずです。これと同じように、料理でもタンパク質分解酵素を含む食材を使って、肉のタンパク質を分解することで柔らかくなります。
肉を柔らかくする食材
タンパク質分解酵素を含む食材とプロテアーゼの名前(わかるものだけ)を表にしました。
食材 | 酵素名 |
---|---|
はちみつ | |
パイナップル | ブロメライン |
キウイフルーツ | アクチニダイン |
たまねぎ | |
生姜 | ジンギパイン |
パパイヤ | パパイン |
いちじく | フィカイン |
麹 |
これらの食材を料理に加えるのは、味の調節だけでなく、肉を柔らかくするということも目的となっています。酢豚(パイナップル)、シャリアピンステーキ(たまねぎ)、豚の生姜焼き(生姜)は有名ですよね。
まとめ
いかがだったでしょうか?
有機化学の真面目な話だけでなく、こういった雑学も記事にしていきます。意外と知らなかったということもあったのでは?
せっかく化学に携わっているのだから、こういった実生活と結びつく知識もあるといいですよね。