反応開発を効率化する2つの置換基を紹介
Abstract
  • 反応開発で使える官能基を紹介
  • パラ置換フェニル基を使うと解析がしやすい

有機化学の研究の中で、多くの人が取り組んでいる新規反応開発ですが、新しい反応を見つける段階は時間がかかるものです。

ここを効率的にできるかどうかで、研究時間が変わってきます。

研究施設などのハード面や教授の方針によって、効率的にできない部分もあります。一方で、個人が変えられる部分については効率化することでも、無駄な実験や時間を抑えることができるようになります。

ここでは、新規反応開発において個人でできる効率化の方法として、反応基質の工夫を紹介します。

Contents

結論と前提

結論としては、パラ置換フェニル基を持つ化合物お勧めです。特に、パラメトキシフェニルおよびパラトリフルオロメチルフェニル基の2つが検討すべき置換基です。

いきなり結論だけ書いてもわかりにくいので、理由は以下で説明します。その前に、この記事内での単語や開発する反応の想定について説明を書くので、一読しておいてください。

この記事の前提

ここでは2種類の化合物から1種類の化合物を合成する新規反応開発を想定しています。出発原料の1つは固定で、もう1つを検討しているとします。

カップリング反応の開発で、研究室にある試薬(から簡単に合成できる化合物)で反応が進行しないか検討している段階をイメージしてください。

具体例を挙げると、鈴木-宮浦反応・園頭反応のようなクロスカップリング反応がイメージしやすいと思います。

(今回は上記の想定で記事を書いていますが、考え方としては他の多くの反応に適応できます)

なお、この記事内で「反応基質」は上の黄色線の化合物を指します。検討しているカップリングパートナーのことですね。

次から、パラ置換フェニル基を持つ化合物をお勧めする理由に入ります。

ベンゼン環のUVでの検出

フェニル基を持つ化合物を使う理由は1つで、それはUVでの検出できるようにするためです。UVで検出することができれば、TLCで反応を追跡できるので反応検討がとても効率化されます。

そもそも出発原料がベンゼン環を持っていれば、反応基質にベンゼン環は必要では無いです。しかし、ベンゼン環が増えれば基本的にはUVの発色感度は上がるので、TLCを見やすくするためにもベンゼン環があると便利です。

パラ置換によるNMRでの検出

パラ置換フェニル基を推す理由はシンプルで、NMRスペクトルが見やすくなるからです。

ほとんどの研究室で反応後にはNMRを測定すると思います。その時にNMRスペクトルがぐちゃぐちゃしていると解析に時間がかかったり、そもそも解析できなかったりします。

反応が成功なのか失敗なのかが判断できないと、その後の検討が進まなくなってしまいます。そういったことを解決するために一工夫必要で、それがパラ位に置換基を持つ反応基質を用いると言うことです。

パラ置換ベンゼンであれば、NMRが格段に見やすくなるのは言うまでもないと思います。

特に下で紹介するような置換基(メトキシ、トリフルオロメチル)をパラ位にもつ置換ベンゼンを反応原料にすると、非常に反応検討の効率が上がります。

この2種類の置換基であれば、電子求引性及び電子供与性の両方で検討でき、かつ反応性も低いので、多くの反応で使えます。

パラメトキシ

パラメトキシフェニル基

電子供与性置換基の代表格でもあるメトキシ基があると、NMRでの解析が効率化されます。

ベンゼン環上のメトキシ基は1H-NMRで約4ppmにピークが現れ、他のピークとかぶりにくいです。さらにシングレットのピークなので、強度が強く見やすいです。

反応基質が残っていれば、ピークが近くに現れますが、シングレットのため、何らかの反応が進行して化合物が変わっていれば、化学シフト値が代わり、簡単にわかります。

パラトリフルオロメチル

パラトリフルオロメチル基

電子求引性置換基としてはトリフルオロメチル基が優れた置換基です。

トリフルオロメチル基であれば19F-NMRで解析ができます。19F-NMRは、当然フッ素しか検出されないので、仮に出発原料だけがフッ素を持っているとすると、19F-NMRで出発原料以外のピークが現れれば、それは反応によって生じた化合物であることがわかります。

パラ置換がおすすめな理由

パラ置換フェニル基がオススメな理由としてもう一つ挙げられるのが、反応点から遠くなるために反応において立体的な影響を受けにくいからです。

反応点から置換基までの距離がパラ置換だと最も遠いため、多くの反応に利用できる可能性が高いです。

パラ置換

他の置換基は?

メトキシ基、トリフルオロメチル基の他にも置換基はたくさんありますが、個人的なおすすめは上の2つです。ただ、これらが入手しにくいときもあると思うので、そういったときは下の置換基も検討する価値があると思います。

ニトロ基:反応性が低く、電子求引性基としてトリフルオロメチル基の代わりに使うこともできます。ニトロ基のオルト位のHが低磁場(8-9ppm目安)にピークが現れるので、他の化合物と被らずに見やすいこともあります。ただ、ニトロ基以外の置換基や化合物の構造によっては他のピークと被ることもあります。

メチル基:弱い電子供与性基として利用することもできます。ベンゼン環上のメチル基は2ppm前後に現れますが、他のピークと被る可能性が高いため、1H-NMRスペクトルでの解析が難しくなります。

おすすめできない置換基

ここまではパラ置換フェニル基が反応検討に使いやすい理由を書いてきました。最後に反応検討ではあまり使わない方が良い置換基を紹介します。

それはオルト位に置換基がある化合物、またはハロゲン置換基を持つ化合物です。

オルト位に置換基があると反応点と近くなりやすいため、反応が進行しにくくなったり、副反応が起きる可能性があり、解析が困難となります。副反応も期待してするのであれば、パラ置換化合物での検討が終わった後にすれば充分です。

オルト位の置換基パラ置換

また、ハロゲン置換基は反応性が高いため、副反応が起こりやすいです。特に遷移金属触媒を用いていると酸化的付加から水素置換されることもあります。

ハロゲンの脱離反応

そのため、オルト位に置換基を持つ化合物やハロゲン置換化合物の検討は反応が進行することがわかった後の基質検討段階で行うと良いでしょう。

まとめ

有機化学の研究で反応検討は大きなウェイトを占めています。なので、そこを少しでも効率化するための工夫を紹介しました。

パラ置換フェニル基を用いることで反応検討が少しでも効率化されると思うので、機会があれば使ってみてください。ただ、反応基質の入手のしやすさも大事なので、入手しやすい化合物から優先的に検討するのも大事なことです。

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