LDA(リチウムジイソプロピルアミド)は学部の教科書でもよく出てくる強力な塩基です。
試薬会社から販売もされているため、最近の学生は買うものだと思っているかもしれません。しかし、今の教授の方々が学生の頃は自分で調製していたそうなので、研究室の方針として「LDAくらいは自分で調製するように」となっているという話をよく聞きます。
私もご多分に漏れず、自分で調製していました。が、いざ調製しようと思っても、論文によって、サイトによって調製の仕方が様々でどの方法で調製すればいいか迷いました。
そこで、私の経験の中からですが、うまくいった方法を紹介します。この方法でやれば、百発百中で、LDAをキレイに調製できました。仮にこの方法で調製できなかったとしたら、試薬か器具のどちらかに問題があるはずです。
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LDAとは?
LDA:Lithium Diisopropylamide
構造は一番上に載せてあります。
強力な塩基であり、イソプロピル基が2つあるため、嵩高い塩基の代表格です。また、求核性が低いことも特徴です。
学部のテストでは「非対称ケトンにLDAを作用させた場合、どちらのプロトンが引き抜かれるか?」といった問題がよく出ます。
基本的にLDAは低温(<0 ˚C)で反応させるため、速度論的に有利な方のプロトンが引き抜かれます。具体的には立体障害が小さい方のプロトンが引き抜かれます。
LDAの調製法
さて、肝心のLDAの調製法ですが、次のようにやれば間違いなくできます。
調製してから使うまでのタイミングが重要なので、LDAを加える側の器具・試薬の準備はしっかりしておきましょう。(すべての器具はドライアップし窒素置換します。溶媒なども乾燥したものを使います。)
- 2径ナスフラスコにジイソプロピルアミン(1.0 mol/L)、THFを入れ-78 ˚Cに冷却
- 冷えたら、n-ブチルリチウム(1 equiv)を滴下
- 0 ˚Cに昇温し、30分撹拌
- -78 ˚Cに冷却し、使用するときにシリンジで移し替える
このようにやれば必ず調製できます。ただ、-78 ˚Cで置いていても手順4から1時間経つと、いくらか分解が始まっているようでした。(1時間経過してから使うと生成物の収率が下がることがありました。体感では1時間後で40%くらい分解している気がする。)
LDAを調製する前に、LDAを加える方の反応系を準備しておく必要があります。
まとめ
LDAの調製法は人それぞれ若干違いますが、個人的には温度コントロールが非常に重要と感じます。
小スケール(<10 mmol)なら上の方法で問題ありません。ただし、全合成のような大スケールだと上の方法でも厳しいかもしれません。より厳密な温度コントロールや滴下が必要かもしれません。大スケールでうまくいかない場合は、直属の先生方に相談してみてください。