- Stern-Volmer plotについて説明しています
- グラフで見るべきポイントを解説します
Stern-Volmer plot(シュテルン-フォルマープロット)って何?
グラフから何を読み取ればいいの?
雑誌会・勉強会で、こんな疑問を持つ人が多いです。
最近は光反応の論文が非常に多いため、Stern-Volmer plotは多くの論文で出てきます。
論文では、読者がStern-Volmer plotを知ってるものとして、話をすすめています。ここで躓いてしまうと、勉強会ではStern-Volmer plotについて説明せずにをスルーということが多いです。
しかし、実はStern-Volmer plotがどういうものか知っていれば、全然難しくはありません。
今回はStern-Volmer plot(シュテルン-フォルマープロット)の見方を解説します。
Contents
Stern-Volmer plotとは?
はじめにStern-Volmer plotの式やグラフについて説明します。何を見るべきかだけを知りたいと言う人は下まで飛ばしてください。
シュテルン-フォルマーの式(シュテルン-フォルマーのしき、英: Stern–Volmer equation)は、光物理的な「分子間」失活過程の速度論についての式である。
この堅苦しい説明だけでは何もわからないと思うので、もうちょっと噛み砕いて説明します。
(PC:photo-catalyst, Q: Quencher)
光によって励起された(高エネルギー状態にされた)光触媒(PC*)から消光剤(Q)にエネルギー移動が起こり、消光剤が高エネルギー状態(反応しやすい状態,Q*)になるということです。
要は反応に必要なエネルギーが、光→触媒→消光剤と移動したということです。(消光剤が直接光を吸収できないため)
ちなみに消光剤がない場合はPC*→蛍光というように、光としてエネルギーが消費されます。
式とグラフ
ここからはプロット(グラフ)について見ていきます。
Stern-Volmer plotは次の式をプロットしたものです。
この式の中で、I0, kq,τ0は定数で、I,[Q]が変数です。化合物の濃度[Q]を横軸、左辺の蛍光強度の比(I0/I)を縦軸としたものがStern-Volmer plotです。
プロットで見るべきは傾きがあるかだけ
このプロットで見るべき事は、実は1つしかありません。
それは、グラフが傾きを持つようになる化合物はどれかと言う事だけです。
- グラフの傾きがある化合物:消光(エネルギー移動)が起きている
- グラフの傾きがない化合物:消光が起きていない
グラフが傾きを持つのは、下のような場合です。
↓
消光剤の増加([Q]↑)によって蛍光の発光(I↓)が減る
=(I0/Iの分母が小さくなるので、Io/Iは大きくなる)
↓
グラフの傾きがある
(横軸が大きくなるほど、縦軸も大きくなる)
逆に、励起された光触媒から他の化合物へのエネルギー移動が起こらないと、化合物の濃度[Q]を変えてもIが変化しません(=横軸の濃度が変化しても縦軸の傾向強度の比は変わりません)。つまり、消光が起きない場合はグラフが傾きを持たないと言うことです。
光反応の論文に載っているStern-Volmer plotでは、必ず複数のグラフ(直線)があります。反応に使った化合物と光触媒をさまざまな組み合わせで混ぜてプロットしています。
なので、シュテルンフォルマープロットで見るべきは「グラフの傾きがあるのは、どの化合物を光触媒と混ぜたときなのか」ということです。
Stern-Volmer plotを見てみる
説明だけだとわかりにくいかもしれないので、具体例を見てみましょう。前に紹介したこちらの論文に載っていたStern-Volmer plotを引用して、説明します。
この論文では次の反応式の反応を取り上げています。
この反応で使われている化合物を4種類の組み合わせで光触媒Ir-1と混合して、そのときの消光をプロットしています。
この中で傾きがあるのはDABCO+Ir触媒の混合溶液(オレンジ)およびイミン2、DABCOとIr触媒の混合溶液(緑)だけです。この結果から励起されたIr触媒からDABCOにエネルギー移動(消光)が起きていると推察できます。
逆にこのStern-Volmer plotからわかることはそれだけで、それ以上のことを気にする必要はありません。
まとめ
Stern-Volmer plotの見るべきポイントについてまとめました。
論文ではあまり説明していないので、初見の人には難しいかもしれませんが、実はそんなに見るべきポイントはありません。「グラフの傾きがある=消光がある」、「どの化合物を混ぜたときに傾きがあるのか」ということだけです。
光反応や量子化学が専門の場合はもっと見るべきことがあるのかもしれませんが、専門外の人はこれくらいで十分です。