論文のパターン化された論理構造を知れば理解力が段違いになる

「論文を読んでもよくわからない」という学生は多いですが、彼/彼女らは、もし論文が英語でなく日本語だとしたら問題なく内容を理解できるのでしょうか?

B4~M1くらいでは、おそらく日本語であったとしても厳しいと思います。なぜなら、論理的な文章に触れてきた経験が少ないので、論理を考えながら読むということができない人が多いからです。

では、どうしたら(少なくとも日本語の文章を)理解できるようになるのでしょうか?

それは論文のパターンを知ることです。パターンを知っていれば、内容だけに集中できるので、比較的簡単に内容を把握できます。

Contents

論文とは誰に向けて書かれたもの?

抽象的な質問ですが、「論文とはどういった内容を誰に向けて書くものでしょうか?」

非常にアバウトな質問ですが、一度考えてみてください。

オレンジと青に光るクエスチョンマーク

期待している答えは「最新の発見を、その分野の教科書レベルの知識を持っている人に向けて書く」です。

論文とはこういった前提で書かれているものです。著者の言い分はこうです。

著者
この論文を読むなら、学部で扱う教科書の内容は知っていますよね。私はそのつもりで書いていますよ。

つまり、教科書の知識を覚えていないと、論文を読む前提条件に入っていません。(それなら自分は読まなくていい、とは言わないでください)

ですので、その前提に入れるように学部で使った教科書の内容は大体覚えましょう。

論理構造

教科書の知識は覚えているとして、他にも知っておくべきことがあります。それは論文の書き方がある程度パターン化されているということです。

パターンになっているということは、そのパターンを知っているだけで、格段に論文は読みやすくなるはずです。なぜなら、次にどういった話が来るか予想できるようになれば、英語や専門用語がわからなくても、こういう話だろうと推測できるようになります。

例えば、イントロダクションで①、②のように書いてあったとします。それぞれについて、その論文中の反応の特徴(新しい点・結論)は何だと思いますか?

①「今までの〇〇反応では、Pd, Rh, Niといった触媒が使われていた」
②「今までの〇〇反応では、主に金属触媒が使われていた」

①は具体的な遷移金属が並べられているので、おそらく他の金属を使った研究だと推測できます。今まで使われていなかったRuかもしれませんし、安価なFe, Cuかもしれません。いずれにしろ「他の金属を触媒として使用した反応を開発した」という結論である可能性が高いです。

一方、②の場合は他の金属というわけではなさそうです。金属触媒で一括りにされているので、今回の研究では有機分子触媒かと予想できます。

ここではわかりやすい例を出しましたが、論文では必ず結論(その論文で取り上げた反応)が答え・解決策になるように、イントロで問題提起をします。

パターン

論文(特に有機化学における反応開発)のパターンは次の通りです。

  1. イントロダクション
  2. This work
  3. 条件検討(Table
  4. 基質検討
  5. 反応機構(中間体の捕捉・計算科学・対照実験など)
  6. 生成物の変換/スケールアップ

論文によって5、6の順番が変わったり、3の検討が複数あったりと多少の違いはありますが、ほとんどこのパターンにあてはまります。

また、図に対応する文章は直前にあります。図が大きいと多少ズレますが、それでも必ず近くにあります。

こういったパターン・書き方を意識するだけでも読みやすさ、理解のしやすさが段違いです。

まとめ

今回の記事では、論文を書く立場からパターンを紹介してみました。論文も学会の要旨も基本は同じパターンで書かれていますので、教授に赤ペンで書かれたとおりに打ち込むだけでなく、どうして直されたのか、考えてみてください。

意味もなく直したりしないですから。

スポンサーリンク